三本木急坂と歴史的建造物

小樽・入船町にある「メルヘン交差点」(正式名称:堺町交差点)は、小樽オルゴール堂やLeTAOなど多彩な店舗が集まり、常に賑わう観光名所のひとつです。

そこから少し歩くと「三本木急坂」という坂道があり、その途中には小樽市指定の歴史的建造物が二つ点在しています。

◆ 三本木急坂

 

メルヘン交差点の横には、JR南小樽駅方面に上る「三本木急坂」という坂道があります。

その名が示す通り、昔は雪が降ると上れなくなるような急な坂でしたが、2回にわたる切り下げが行われたことにより、現在の勾配は約8%となり、小樽でも比較的緩やかな坂道となっています。

「三本木」という名前は、坂の中腹にある「海陽亭」向かいに立っていた3本のアカダモ(ハルニレ)の大木に由来します。船乗りたちの目印になるほど立派な大木でしたが、2回目に行われた切り下げの際に伐採されてしまいました。

坂の途中には小樽市指定の歴史的建造物である海陽亭や猪股邸があり、頂上に出ると小樽港を一望できる爽やかな景色が広がります。

◆ 海陽亭(旧魁陽亭)

メルヘン交差点から三本木急坂を登り始めて間もなく、左手に見えてくるのが、安政初期(1855~1860年)に創業した料亭の「海陽亭」です。創業時の「魁陽亭」から「開陽亭」、そして「海陽亭」へと三度名称を変えながら、平成27年(2015年)の閉店まで、長く北海道を代表する老舗料亭として親しまれました。

建物の大部分は大正期に増築されたものですが、2階の大広間「明石の間」は、150人以上の大宴会が開催可能な138畳の広さを持ち、明治29年(1896年)に発生した大火による類焼の後に再建されたと考えられています。同じく2階にある「松風」とともに、早くから和風建築に洋風の工法を取り入れている点が大きな特徴です。

明治39年(1906年)11月には、日露戦争後の樺太国境画定会議を終えた関係者による大宴会が催されるなど、日本の歴史にもその名を刻んでいます。榎本武揚や伊藤博文をはじめ、国内外の政治家、文化人、著名人たちが数多く訪れた記録や逸話も残されているほか、作家・山口瞳のエッセー「小樽、海陽亭の雪」にも登場するほど有名な料亭でした。

 

現在建物付近に立ち入ることは出来ませんが、坂の途中からその姿を少し見ることが出来ます。

◆ 猪股邸

三本木急坂をさらに上っていくと、左手の奥まった一角にひっそりと佇む、小樽市指定歴史的建造物「猪股邸」が見えてきます。

この邸宅は、倉庫業を営んでいた猪股家の2代目・猪股孫八氏によって建てられたもの。もともとは小樽市色内町に暮らしていましたが、明治37年(1904年)の大火によって旧宅を焼失したことから、高台にあたる現在の場所に新たな邸宅を構えました。

敷地内には防火対策として、天狗山から切り出された軟石を用いた石造りの門・塀・蔵が設けられており、防火壁の役割を果たしています。なかでも珍しい中国風の門は、当主が中学の頃の旅行で描いたスケッチを元に造られたと言われています。

邸宅の外観は純和風の造りですが、玄関の左脇には洋風の応接室も設けられているそうです。

 

※猪股邸は現在も住居として使用されているため、敷地内に立ち入ることはできません。

 

三本木急坂を上りきると、道は三方向に分かれています。右手にはJR南小樽駅へと続く道、正面やや左には住吉町方面へ下る「山ノ上の坂」、そして左手には、ひときわ細く急な下り坂「赤坂」が延びています。

それぞれの道が異なる表情を持ち、静かな住宅街や歴史ある景観へとつながっていくこの場所は、坂の街・小樽ならではの魅力が詰まった分岐点です。

観光の中心地・堺町通りから少し足を伸ばして、歴史と景色が詰まった三本木急坂とその周辺をぜひ歩いてみてはいかがでしょうか。

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